週間ASEAN経済ニュースまとめ 9月18日〜9月24日
対象期間 2026年9月18日〜9月24日/掲載 245本
この1週間の東南アジアは、通商交渉と資本市場改革が同時並行で進んだ週だった。タイとベトナムは対米関税交渉を大詰めに進め、フィリピンはEUとFTA実質合意にこぎ着けた。インドネシアでは中央銀行が政策金利を5.75%に据え置く一方、証券取引所が最低株価を50ルピアから1ルピアへ引き下げるなど市場改革も動いた。ADBが加盟国の成長率予測を相次いで見直し、ベトナムは7.8%へ上方修正された一方でフィリピンは3.3%へ下方修正されるなど、域内の温度差が数字にも表れた週だった。
資金の動きでは日系企業の存在感が目立った。三菱商事はフィリピンのアヤラへの出資比率を4.7%から15%に引き上げ、1124億円を投じると発表。MicrosoftはインドネシアのAI・クラウド基盤整備に17億ドルの投資を表明した。SMBCはベトナムVPBank株の保有比率を15%から20%へ引き上げる交渉を続けるが、株価評価で難航している。フィリピンではGCash親会社Myntの10月20日上場に向け、BlackRockなど機関投資家が924億円規模の出資を決めた。ベトナムのVinSpeedは独シーメンスと高速鉄道整備で10億ユーロの契約を結んだ。
政策・金融面では規制見直しが相次いだ。インドネシア金融庁(日本の金融庁に相当するインドネシアの金融監督当局)はP2P融資の「3社上限」規制を撤回し、住宅ローン証券化の新規則も公布した。ベトナム税務総局(インドネシア財務省の税務当局。日本の国税庁にあたる)はVAT還付の運用緩和を通達し、政府はグリーン事業の認定基準を初めて定めた46号決定を公布した。マレーシアでは割賦購入契約の金利計算方式移行が20行中14行まで進んだ。シンガポールMAS(中央銀行と金融監督当局を兼ねる)は年次金融安定性レビューを公表し、CPF金利下限4%の延長も決めた。タイはデータセンターの新規承認を一時停止し、1カ月以内に最低基準を策定する方針を示した。
国別の明暗も鮮明だった。ベトナムはADB予測が7.8%に上方修正され、FTSE格上げも発効するなど勢いが目立つ一方、フィリピンは経常赤字が前年比51.7%拡大し、ペソ安と成長率下方修正が重なった。マレーシアは貿易黒字が76カ月連続を記録したが、失業者は1〜9月で前年比15196人増え、住宅市場も上半期販売率33.2%と軟調だった。タイはADB予測が2.0%に上方修正されたものの、公的・家計債務がGDP比150%に達し財政余地の乏しさが浮き彫りになった。インドネシアは燃料自給を打ち出す一方、燃料不足で南スラウェシ州が休校になるなど地域差もあった。
日本の企業・投資家にとっては、三菱商事のアヤラ出資拡大やSMBCのVPBank交渉、MicrosoftのAI投資表明が示すように、フィリピンとベトナムへの資本投入が継続していることが読み取れる。タイのシンクロトロン建設ではJICA融資が絡み、インフラ分野での関与も続く。一方でみずほ銀行はシンガポールで鉄鉱石トレーダーを詐欺で提訴する事態となり、商品トレード周辺のリスクが表面化した週でもあった。各国の規制・関税交渉の行方次第で、投資先としての優先順位が変わりうる材料が揃っている。
今週の注目
- フィリピン フィリピン:三菱商事、アヤラ出資15%に拡大 1124億円投資 — 三菱商事がアヤラ出資を15%へ拡大、日系の東南アジア投資の規模感を示す
- ベトナム SMBC、ベトナムVPBank株20%取得へ交渉中、株価評価で難航 — SMBCのVPBank株20%取得交渉、評価額での難航が続く
- インドネシア インドネシア、Microsoftが17億ドル投資表明 AI・クラウド強化 — Microsoftのインドネシア17億ドル投資、AI・クラウド基盤強化の規模
- タイ タイ、3GeVシンクロトロン建設 JICA融資で2034年稼働目標 — JICA融資でタイ初の大型加速器建設、日本の技術協力案件
- シンガポール シンガポールRadiant World、10億ドルの売掛金に疑義 みずほが再建申立て — みずほ銀行が絡む鉄鉱石詐欺、150億円規模の焦げ付き疑惑が表面化
- インドネシア インドネシア中銀、政策金利5.75%に据え置き — インドネシア中銀が金利据え置き、通貨・物価動向の分岐点
国・地域別
インドネシア(52本)
Microsoftがクラウド・AI整備に17億ドルの投資を表明した。同時に中央銀行は政策金利を5.75%に据え置き、金融政策の様子見姿勢を示した。ほかにも証券取引所が最低株価を50ルピアから1ルピアへ引き下げる規則改定を行い、資本市場の裾野拡大を狙う動きも見られた。
- インドネシア金融庁、2026年に資本市場優遇策を提案
- インドネシア東カリマンタンで探査井掘削開始 ガス109BCF見込む
- インドネシア、Microsoftが17億ドル投資表明 AI・クラウド強化
- インドネシア、干ばつでニッケル生産10万トン減少
- インドネシアPaiton電力、2.6GWの水素混焼火力を計画
- インドネシア国鉄KAI、車両メーカーINKAを2027年統合
- インドネシア中部スラウェシ、太陽光60MW・蓄電池200MWh整備へ
- インドネシア、17歳全国民に自動口座開設 初期残高444円
- インドネシア:ジョンリン系、バヤン株30%取得への関与否定
- インドネシア証取、最低株価Rp50→Rp1に緩和 バクリー系株に焦点
ベトナム(34本)
ADBが2026年GDP成長率予測を7.8%へ上方修正し、域内で最も強い伸びを示した。VinSpeedは独シーメンスと高速鉄道整備で10億ユーロの契約を締結した。一方で中央銀行は銀行間金利急騰を受け資金供給とスワップを実施し、金融市場の緊張も浮き彫りになった。
- SMBC、ベトナムVPBank株20%取得へ交渉中、株価評価で難航
- ベトナムMasan、タングステン子会社株4.99%を米Elmetへ売却
- ベトナム二桁成長に労働生産性年8.5〜9%上昇必要
- ベトナムGeely、8カ月で販売600%増 遅延には1日611円補償
- ベトナム中銀、VIP顧客ら情報開示を求める新規則案、大株主は各10人まで
- ベトナムVinSpeed、独Siemensと高速鉄道10億ユーロ契約
- ベトナムGDP、ADBが今年7.8%成長に上方修正
- ベトナムMasan Consumer、8ヶ月売上15%増の21536億ドン
- ベトナム・フーコック島空港、T2整備に58000十億ドン投資
- ベトナムTikTok Shop、10kg超荷物に新手数料導入
タイ(40本)
ADBが2026年成長率予測を2.0%へ上方修正した一方、公的・家計債務はGDP比150%に達し財政余地の乏しさが指摘された。アヌティン首相はニューヨークでNYSEの開鐘式に出席し、SETとの協力覚書に署名した。データセンター新設は最低基準策定まで一時停止となった。
- タイ、中国GWM・SAICにEV部品投資要請 輸出7カ月2.66億ドル
- タイ証取、NYSEと5分野で提携覚書に調印
- タイ首相、NYSEで開鐘式に出席 歴代3人目
- タイ、軽油B20補助金を1リットル8.99バーツに改定
- タイMUJI、店舗を最大3倍に拡張 売上80%増目指す
- タイ農民100人超、種苗新条約UPOV1991導入に抗議デモ
- タイ下院、資本市場4法案を可決 特別委員会設置
- タイ、財政余地3〜4%に縮小 VAT7%を10%へ段階増税検討
- タイ税関、2026年度11カ月で歳入約2兆9919億円 前年比9.9%増
- タイ、0.5MW以上DCに届出義務 基準9月までに策定
フィリピン(42本)
フィリピンとEUが関税94%超を自由化するFTAで実質合意に達した。GCash親会社Myntは10月20日上場に向けBlackRockなど機関投資家から924億円規模の引受を得た。一方でADBは成長率予測を3.3%に下方修正し、経常赤字は上半期に51.7%拡大した。
- フィリピンGCash、IPO批判にAyala社長反論 月間利用者4150万人
- フィリピンMynt社IPO、大手投資家が924億円出資へ
- フィリピン工業団地、電力料金17~18%上昇で選定基準が変化
- 比とEU、関税94%削減のFTAで実質合意 2027年署名目指す
- フィリピン、個人向け国債を前年比半減以上に縮小
- フィリピン証券、海外株解禁 DragonFiが上限100%投資容認
- 比・EU、FTA合意 関税94%自由化 GSP+失効2027年に備え
- フィリピン、電子インボイス義務化 26年12月末期限
- フィリピン:三菱商事、アヤラ出資15%に拡大 1124億円投資
- JFC、ベトナムHighlands Coffee株11%売却 約139億円
マレーシア(41本)
8月の貿易黒字は前年比77%増で76カ月連続の黒字を達成した。東海岸鉄道(マレーシア東海岸と西海岸を結ぶ建設中の鉄道)は開業を2026年12月へ前倒しし、完成度は95.41%に達した。一方で失業者は1〜9月で前年比15196人増え、住宅市場も上半期販売率33.2%と軟調な状況が続いている。
- マレーシア先行指数、7月に1.1%上昇し115.3ポイント
- GWM、マレーシア政府車両評価にPremium MPVで参加
- マレーシアなど6カ国、2026年に中国上回る成長へ
- マレーシア航空、中国路線を9都市に拡大 深セン・長沙に新規便
- マレーシア、リンギ連動ステーブルコインUMYR実証へ
- マレーシア航空会社AirBorneo、P W Canadaと4年整備契約
- マレーシアHE Group、ジョホールDC工事で124百万リンギ受注と報道
- マレーシア、2027年予算は燃料補助金と賃金上昇の均衡が焦点に
- マレーシアEGH、ACE市場上場で22億3143万円調達へ
- マレーシア・ペナン州、中国便増便を要望(2026年9月時点)
シンガポール(36本)
政府は半導体産業の国家ブランド「SG Semiconductor」を始動させ、研究開発提携を拡大した。8月の非石油国内輸出は前年比46.2%増となりOCBC(シンガポールの大手銀行)が通年予測を上方修正した。一方でMASは上場企業の32%がAI下降シナリオでリスクに直面すると試算した。
- 東南アジアのスタートアップが7.25億ドル調達、AI企業も参加
- シンガポール国立大、AI特許活用基盤Novaを始動 拠点網世界4カ所に
- シンガポール、半導体ブランド始動 世界の1割生産維持へ
- シンガポールRadiant World、10億ドルの売掛金に疑義 みずほが再建申立て
- シンガポール、10歳から半導体教育 2年で600人育成
- シンガポール、200人超企業に人事資格義務化 28年7月から
- シンガポールCarro、米星同時上場で最大790億円調達検討
- シンガポール通信4社が3社に、StarHubとM1が統合協議
- シンガポールCOE、9月第2回入札で全区分下落 前回は異例の3週間実施
- シンガポールのIncredible Holdings、司法管理を申請 取引停止4年超
出典
本記事は東南アジア経済新聞が2026年9月18日〜9月24日に掲載した記事のまとめです。個別の出典は各記事に記載しています。

