フィリピン通信大手PLDT、24年担当の監査法人SGVが辞任
フィリピン大手通信会社PLDTの監査を24年間続けてきたSGVが独立性の毀損を理由に2026年10月31日付で辞任し、2024年・2025年の監査意見を撤回した。
フィリピン最大手の通信会社PLDTの監査を約24年間担当してきたSyCip Gorres Velayo & Co.(SGV、国内最大手の専門サービス会社でErnst & Youngの現地法人)が、2026年10月31日に辞任を通知した。SGVは2025年度の監査意見を2026年4月に発行した後に撤回し、同時に2024年度分の意見も取り消した。背景にはPLDTが2026年8月に公表した、ヘッジ取引の会計処理をめぐる内部統制の不備に起因する会計誤りがある。SGVは2025年12月31日時点でPLDTの財務報告に係る内部統制に重大な欠陥があったと判断し、米証券取引委員会(SEC)の規則に照らして自らの独立性が損なわれたと結論づけた。
PLDTの会計問題公表後、株価は8月14日終値までに4.49%下落し1株1,170フィリピンペソ(約2,912円)となり、フィリピン証券取引所では同日PLDT株の取引が1時間停止された。PLDTの開示によると、SGVは「2025年度監査意見発行時点で独立性が損なわれており、その状態は現在まで継続している」と説明し、ヘッジ契約に伴う損益計上をめぐり「もはや信頼できない」と指摘した。新たな現地監査人としてIsla Lipana & Co.(PwCのフィリピン法人)が2026年11月2日付で選任されたが、米規制当局向けの国際財務諸表および内部統制報告を担う監査人は未定という。
背景
PLDTは2022年12月、2019年から2022年にかけての設備投資予算が計480億フィリピンペソ(約1194億7729万円)超過していたと公表した経緯がある。当時の調査では不正の証拠は見つからなかったが、PLDTは支出管理体制の見直しを行った。今回の会計誤りはヘッジ取引に関する統制の不備から生じたもので、SGVはこの問題を踏まえて独立性の毀損を認定した。
日本企業への含意
PLDTはニューヨーク証券取引所に上場しており、米SECの開示・内部統制規制の対象となる。フィリピンの通信・インフラ企業と資本提携や取引を行う日本企業は、現地の会計基準だけでなく米国基準に基づく監査の継続性やガバナンス体制の変化を注視する必要がある。特にヘッジ会計のような複雑な金融取引を伴う提携案件では、監査人交代が財務報告の信頼性評価に影響しうる点を考慮すべきである。
本記事の円換算は当日のレート(10000IDR=87.05円 / 1000VND=6.13円 / 1THB=4.68円 / 1PHP=2.49円 / 1MYR=38.79円 / 1SGD=123.46円 / 1USD=157.90円)によります。
出典
本記事は上記1社の報道にもとづきます。

