シンガポール、運用資産6.7兆Sドルで税優遇など3施策
シンガポール金融管理局は2026年8月19日、資産運用拠点としての競争力を強化するため、税優遇など3つの新施策を発表した。
シンガポール金融管理局(MAS)は2026年8月19日、資産運用拠点としての地位強化に向けた3施策を発表した。内容は、適格ファンドに運用サービスを提供する事業者の収益に対する税優遇の新設、ヘッジファンド運用会社の誘致を狙う新プログラム「ヘッジファンド投資プログラム」の創設、海外人材向け就労許可証「ONEパス」内に新設する「投資運用トラック」の3つ。税優遇は2027賦課年度から適用予定で、詳細は2027年度予算で示される。シンガポール財務省と人材省も制度設計に関与する。背景には、香港が2026年6月に立法会へ提出した税制改正案があり、資産運用業界の人材・資金がシンガポールから香港へ流出する懸念が業界団体から指摘されていた。
シンガポールの運用資産残高は2025年に前年比10%増の6.7兆Sドル(約827兆5692億円)に達し、純流入額も29%増の3760億Sドル(約46兆4427億円)となった。資産運用業は金融セクターの産出の約15%、雇用の13%を占める。一方、香港の資産・富裕層運用資産は20%増の42.2兆香港ドル(約5212兆4506億円)、ファンド純流入は193%増の2.1兆香港ドル(約259兆3874億円)、資産運用・ファンド助言部門は19%増の31兆香港ドル(約3829兆514億円)に拡大した。ONEパスの投資運用トラックは有効期間5年の就労許可証に新設される。MAS副議長チー・ホンタット氏は「資産運用業は金融セクターの成長エンジンであり、競争力維持のため必要な対策を講じる」と述べた。
背景
業界団体のシンガポール代替投資運用協会(AIMA)は2026年7月、香港の税制改正とその影響についてMASに意見を提出し、迅速な対応を求めていた。AIMAによれば、個人課税が投資専門人材の移動先選びで重要な判断材料となっており、ある大手運用会社ではシンガポールの人員が減少する一方、香港の拠点が数倍に拡大したという。香港政府は税制改正の目的について、より多くのファンドやファミリーオフィスを誘致し、世界の運用資金を増やし、地場の資産運用・関連専門サービスを拡大することにあると説明している。
日本企業への含意
資産運用業務や富裕層向けサービスをアジアで展開する日本の金融機関や商社にとって、シンガポールと香港のどちらに地域拠点や人材を置くかの選択肢が増える可能性がある。税優遇や就労許可証の新制度は、現地法人の設立や人材採用計画の見直しを検討する材料になる。香港の税制改正の最終決定時期も踏まえ、両都市の制度変更を継続的に注視する必要がある。
本記事の円換算は当日のレート(10000IDR=88.53円 / 1000VND=6.09円 / 1THB=4.70円 / 1PHP=2.52円 / 1MYR=38.68円 / 1SGD=123.52円 / 1USD=158.10円)によります。
出典
本記事は上記1社の報道にもとづきます。

